高脂血症(高コレステロール血症・高中性脂肪血症)

血液中の脂質は大きく「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「中性脂肪(トリグリセライド)」に分けられ、 LDLコレステロールや中性脂肪が高い値を示す場合を『高脂血症』といいます。 それにHDLコレステロールが低い値を示す場合加えると、『脂質異常症』と呼ばれます。 高脂血症(脂質異常症)は、高血糖症(糖尿病)、高血圧症、高脂肪症(内臓脂肪型肥満)とあわせて「死の四重奏」と呼ばれ、 互いに影響し合って動脈硬化を引き起こします。


■血液中の脂質

コレステロールと中性脂肪に大きく分けられる

人間の体内の脂質は、「体脂肪」と血液中の「脂質」の2つに分けられます。動脈硬化と直接関係するのは、血液中の脂質です。 また脂質は、成分の面からは「コレステロール」「中性脂肪(トリグリセライド)」 に分けることができます。コレステロールは細胞膜やホルモンなどの材料に、中性脂肪は体を動かすエネルギー源になります。 これらの脂質は、そのままでは水が主成分である血液の中には溶け込めません。 そのため、血液中では、「LDL」「HDL」「VLDL」などの粒子「リポたんぱく」 という”乗り物”に入った状態で存在しています。LDL(悪玉)は全身にコレステロールを運ぶのに対し、 HDL(善玉)は血管壁などにたまったコレステロールを取り除きます。

中性脂肪は、体を動かすエネルギー源の一つで、全身の脂肪細胞などに蓄えられ、必要に応じてエネルギーとして利用されます。 血液中ではVLDLなどのリポたんぱくによって運ばれます。 血液中の脂質は、肝臓で合成されるものと、食事から摂ったものから成り、バランスが保たれていれば、 体に欠かせないものです。しかし、食べすぎや運動不足で、脂質のバランスが崩れている人が増えています。 脂質の乱れは動脈硬化の大きな原因になります。動脈硬化を防ぐには、適正な脂質の値を知っておき、 乱れには適切に対処することが大切です。

LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪の働きは次のようなものです。

▼LDLコレステロール
血液中にLDLが増えすぎると、血管壁の中に入り込み、コレステロールの塊となってたまります。 この塊が血管壁を内側から押し上げることで、動脈硬化が起こります。 動脈硬化を促進するため、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。

▼HDLコレステロール
HDLには、血管壁にたまったコレステロールを回収して、動脈硬化から血管を守る働きがあります。 そのため、HDLコレステロールは、「善玉コレステロール」とも呼ばれています。 動脈硬化は、LDLが多い場合だけでなく、HDLが少ない場合にも進行しやすくなります。

▼中性脂肪(トリグリセライド)
主にVLDLに含まれています。中性脂肪が多いと、通常のLDLよりも小さいLDLが増えます。 この小さいLDLは血管壁に入り込みやすく、動脈硬化を強く促進します。 また、中性脂肪が多いと、HDLが減ることもわかっています。 つまり、中性脂肪が増えると、間接的に動脈硬化を促進することにつながるのです。

■高脂血症と脂質異常症

脂質のバランスが乱れた状態をいう

『高脂血症』とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪などの血清脂質の数値が 必要量よりも過剰な状態をいいます。『脂質異常症』とは、 高脂血症とHDLコレステロールの数値が低い状態(低HDLコレステロール血症)を加えたものをいいます。 つまり、脂質のバランスが乱れた状態を脂質異常症といいます。 日本動脈硬化学会の診断基準では次のいずれかに当てはまる場合に「脂質異常症」と診断することになっています。

  • 中性脂肪(トリグリセリド)・・・・・150mg/dl以上
  • LDLコレステロール・・・・・140mg/dl以上
  • HDLコレステロール・・・・・40mg/dl未満

悪玉とされるLDLコレステロールは多すぎることが問題となり、
善玉とされるHDLコレステロールは少なすぎることが問題となります。

従来は、高コレステロールや中性脂肪が多いことが重視されて「高脂血症」と呼ばれていましたが、 近年、HDLコレステロール値は低い方が動脈硬化を進めることから、より広い意味を持つ「脂質異常症」 という名称に変更されました。
しかし、高脂血症という言葉がなくなったわけではありません。 今後も、LDLコレステロールや中性脂肪の値が高いことを表す呼び方として使われていくでしょう。 また、以前の診断基準には「総コレステロール値」が含まれていましたが、2007年の改訂で、 診断基準からはずされました。総コレステロール値で判断すると、HDLコレステロール(善玉) が多い人も含まれてしまうためです。

「脂質異常症」者は年々増加していますが、ほとんどの場合において自覚症状がないため 血液検査などで発覚するケースが多いようです。 放置すると心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こす原因となることから、要治療とされています。 また、中性脂肪が極端に高いタイプでは、急性膵炎を起こす危険性もあり、注意が必要です。


■高脂血症・脂質異常症と動脈硬化

血管壁にコレステロールなどが入り込む

「動脈硬化」とは、血管が硬くなったり、血管壁にコレステロールなどがたまって 血管の内腔が狭くなった状態のことです。 進行すると、血管が詰まって「心筋梗塞」「脳梗塞」を起こすことがあります。 血液中の脂質のバランスが崩れるし脂質異常症は、動脈硬化の大きな原因の一つです。 「LDLコレステロールが多すぎる」「HDLコレステロールが少なすぎる」「中性脂肪が多すぎる」といった 脂質の異常があると、動脈硬化が起こりやすくなり、こうした脂質の異常が重なった場合には、 動脈硬化の危険性がいっそう高まります。脂質異常症は、自覚症状がほとんどなく、30年ほどの年月をかけて 徐々に動脈硬化を進行させるので、動脈硬化の予防には、定期的に検査を受け、脂質異常症を早期に発見することが重要です。

【関連サイト】:『動脈硬化』


■高脂血症・脂質異常症の治療

生活習慣の改善が基本。必要であれば薬を使う

高脂血症には、体質や遺伝子異常が基になって起こる「原発性高脂血症」と、他の病気などが 原因となって起こる「続発性高脂血症」があります。治療を始める前に、まずその鑑別が重要で、 続発性高脂血症であれば、原因疾患の治療が必要です。

高脂血症は、高血糖症(糖尿病)、高血圧症、高脂肪症(内臓脂肪型肥満)と併せて「死の四重奏」と呼ばれ、 互いに影響し合って動脈硬化を引き起こします。 高脂血症は、食事を中心とする生活習慣とのかかわりが深く、治療の基本となるのは 食事療法と運動療法などの「生活習慣の改善」です。 まず、生活習慣の改善を3〜6ヶ月程度行い、それでも目標値に達しない場合は、薬物療法を検討します。

治療によって目指す値はその人の動脈硬化のリスクによって違い、危険因子によって分類した 日本動脈硬化学会編纂の「動脈硬化性疾患ガイドライン」に於いて、「患者カテゴリー」別に目標値が定められています。

●持っているリスクによって脂質の管理目標値は変わる

動脈硬化を防ぐには、脂質のバランスを整えることが大切です。 また、ほかにも高血圧、高血糖、喫煙習慣などがあると、血管壁が傷つきやすくなり、さらに動脈硬化が進行します。 脂質と同時にこれらのリスクを併せて管理することが、動脈硬化を防ぐことにつながります。 HDLコレステロール値と中性脂肪値は、一律の目標値が決められています。 一方、動脈硬化に直接影響するLDLコレステロール値は、リスクが高くなるほどより厳しく管理する必要があるため、 目標値はリスクに応じて4段階に設定されています。

▼LDLコレステロール値
・狭心症、心筋梗塞の経験者・・・・・100mg/dl未満
・糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症あり・・・・・120mg/dl未満
・動脈硬化性疾患の危険因子(男性45歳以上、女性55歳以上、高血圧、高血糖、喫煙、
 家族に狭心症・心筋梗塞にかかった人がいる、HDLコレステロール値が40mg/dl未満)がある場合
 3個以上・・・・・高リスク群:120mg/dl未満
 1〜2個・・・・・中リスク群:140mg/dl未満
 0個・・・・・・・低リスク群:160mg/dl未満

▼HDLコレステロール値
40mg/dl以上

▼中性脂肪値
150mg/dl未満

【関連項目】:『脂質異常症の管理目標』

◆生活習慣の改善

生活習慣の改善のポイントとなるのは、「食生活の改善、運動、禁煙」です。 血液中の脂質を増やす生活を改めて、動脈硬化を進行させない生活を毎日継続していくことが、成功への近道となります。

▼禁煙
喫煙は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。喫煙者はきっぱりと禁煙してください。 禁煙が難しいときは、禁煙外来を受診するのも一つの方法です。
【関連サイト】:『禁煙補助製品』

▼食生活を正す
食事で注意すべきポイントは、摂取量と栄養のバランスです。 自分にとって1日の適正な摂取エネルギー量を知り、その範囲内で炭水化物、たんぱく質、 脂肪の三大栄養素をバランスよく摂りましょう。 脂肪は種類にも気をつけ、コレステロールの摂取量は1日300g以下に抑えます。 エネルギー摂取量は、食材の選び方や調理法の工夫などでも減らすことができます。
【関連項目】:『高LDLコレステロール・高中性脂肪対策のための「食事・食品」』

▼適度な運動を行う
運動はHDLコレステロール値を上げ、中性脂肪値を下げる効果が期待できます。 動脈硬化やメタボリックシンドロームの対策に有効なので、積極的に行いましょう。 ウォーキングなどの有酸素運動がお勧めです。また、エレベーターを使わずに階段を使うなど、 ふだんの生活の中で体を動かす習慣を付けることも大切です。 適度に運動することで中性脂肪が減り「インスリン」の働きもよくなります。
【関連サイト】:『運動不足解消』
【関連項目】: 『HDLコレステロールをアップさせる運動療法』

「禁煙する」「食生活を正す」「適度な運動を行う」の3つが基本になります。 個人差はありますが、生活改善を始めてから2ヶ月ほどで効果が現れてきます。 まずは、体重か腹囲を、今より5%減らすことを目標にしてください。 しかし、生活習慣の改善が大切だとわかってはいても、実際には長続きせずに挫折してしまう人が少なくありません。 毎日の生活に関わることは、”これもダメ、あれもダメ”と考えると、挫折につながりやすいものです。 あまり気負わずに自然に生活に取り入れていくことが、成功の秘訣です。

◆薬物療法

薬物療法では、動脈硬化と最もかかわりの深いLDLコレステロール値を適正にすることが、第一目標となります。 LDLコレステロール値や中性脂肪値を下げる薬を使います。 副作用として「胃の調子が悪くなる」「手足に力が入りにくくなる」といった症状が現れることがあります。 まれに、「筋肉の細胞が壊れる」「肝機能が低下する」などの重篤な副作用が出ることもあり、その場合は、 担当医に相談の上、服薬を中止します。体調などに少しでも異変を感じたら、すぐに担当医に相談してください。 薬物療法は、脂質の値を正す効果はありますが、動脈硬化の原因を取り除いているわけではありません。 動脈硬化の予防には、その原因となる生活習慣の改善が最も重要です。

【関連項目】:『高脂血症の薬』


■EPA&DHA

「EPA&DHA」は、中性脂肪やコレステロールとは種類の異なる脂質で、 「不飽和脂肪酸」と呼ばれ、健康によいさまざまな働きがあります。 EPAとDHAは、体内でコレステロールを作る酵素の働きを抑え、 コレステロールや中性脂肪の分解を進め、排出を促す働きもあります。 EPAやDHAを多く摂取するとLDLコレステロールの割合が減り、 HDLコレステロールの割合が増えることもわかっています。


また、、EPAには血液中の血小板が固まるのを抑制して、血栓ができるのを防ぐ効果があり、 DHAは、赤血球の膜を柔らかくすることで血液の流れをよくします。 さらに、DHAは脳の情報伝達にも重要な役割を果たしており、 DHAをたくさん摂取すると、脳の働きが活発になると言われています。

【関連サイト】:『オメガ3脂肪酸』


■その他

▼HDLは多ければ多いほどよいのか?
HDLは、血管壁などにたまったコレステロールを取り除く働きがあるため、「善玉」と呼ばれています。 一般的に、HDLコレステロール値は高ければ高いほどよいとされていますが、 100mg/dlや120mg/dl以上の場合は、もはや善玉として働いていないのではないかという意見もあります。 このような場合、HDLが通常より大きくなっており、コレステロールもある程度ため込んでいて、 血管壁などからコレステロールを取り除く能力が発揮できないとも考えられるからです。 HDLコレステロール値が著しく高い状態が良いのか悪いのかについては、まだ結論が出ていません。 そのような人の場合は、検査を行って血管の状態を見るなど、個別に対応していくことが望ましいと思われます。