脂質異常症の診断基準

脂質異常症診断基準としては、2007年に日本動脈硬化学会から5年ぶりに改訂版が発表され、 「高脂血症」から「脂質異常症」と名称が変更されました。 従来、中性脂肪値、総コレステロール値、またHDLコレステロール値の異常を高脂血症と総称していましたが、 低HDLコレステロール血症を含む表現として適切ではないという指摘と欧米の類別慣習を取り入れ、 「脂質異常症」と名付けられました。脂質異常症は、「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「トリグリセライド」 の値をもとにして診断基準が設定されています。


■診断基準

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、脂質異常症の診断基準は表1のように設定されました。 この診断基準の表は、脂質異常症の診断及び動脈硬化性疾患を起こしやすい高リスク群のスクリーニング のために設けられているものであり、薬物治療を要する脂質異常症の基準ではありません。 したがって、「この診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではないこと」および 「薬物療法の適応に関しては他の危険因子を勘案し決定されうべきであること」を明記しています。

血液検査の際に上記の基準値から1項目でも外れた場合は、脂質異常症と判断されます。 以前は「総コレステロール値」が判断基準に含まれていましたが、総コレステロール値は高くても問題ないという研究が発表され、 診断基準から総コレステロール値の項目は消えて、LDLコレステロール値とHDLコレステロール値を分けて調べることが 推奨されることになりました。


●悪玉指数(HDLとLDLの比率)

HDLコレステロール(善玉)とLDLコレステロール(悪玉)がそれぞれ基準値内で正常だからといって 安心できるわけではありません。コレステロール値は、善玉と悪玉の比率が肝心なのです。 LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割り算した結果(悪玉指数)が、2.5以上なら、 たとえそれぞれの値が正常でも、実際には動脈硬化が急速に進み、脳卒中や心臓病を招く危険が大きいことがわかります。 例えば、LDLコレステロール値が136mg、HDLコレステロール値が44mgなら、診断では正常とみなされます。 しかし、悪玉指数は3.1となり、対策を講じる必要があります。 すでに狭心症や心筋梗塞を患っている人は、悪玉指数を2.0未満に下げるべきです。 そうすれば動脈硬化の進行を抑えられるという報告があります。


●LDLコレステロール値は低いほどよいわけではない

LDL(悪玉)コレステロール値は増えすぎると動脈硬化を促進させることは上に述べましたが、 そうかといって、低ければいいというものでもありません。

ある病院で、住民を対象にLDLコレステロール値の高さと死亡率や死因との関係を調べる大規模調査が行われました。 調査の対象になったのは、1987年〜2006年に住民検診を受けた26,000人で、これらの人たちをLDLコレステロール値の 高い順に7群に分け、平均8.1年追跡調査しました。その結果、男女共に、LDLコレステロール値が最も低い群 (1デシリットル当たり79ミリグラム以下)が一番死亡率が高い、という意外な結果が出たのです。 この群の死亡率の高さは、男性で140〜159ミリグラムの群の約1.6倍、女性で120〜139ミリグラムの群の約1.3倍でした。 また、男女共に、LDLコレステロール値が高くなるにつれて死亡率は低くなる、という傾向も認められました。 心臓病や脳卒中に限れば、男性では180ミリグラム以上で死亡率が上昇しましたが、女性では死亡率に大きな変化は ありませんでした。

◆LDLが少なすぎると免疫力が弱まる

LDLコレステロール値が低くなると死亡率が高まるのは、癌や呼吸器疾患(肺炎や結核など)による死亡が増えたからです。 もともとLDLコレステロールは炭水化物やたんぱく質と並んで大切な栄養素で、 細胞膜や神経細胞、ホルモンの重要な材料となります。そのため、LDLコレステロールが少なすぎると、 免疫力が弱まり、癌や呼吸器系疾患の発生を許してしまうのだろうと考えられます。

昨今の風潮では、LDLコレステロール値は低いほどよいと思われていますが、 上記の調査から、LDLコレステロール値は男性で100〜180ミリグラム、女性で120ミリグラム以上が適正ではないか、と考える意見もあります。