脂質異常症の薬【薬物療法】

脂質異常症治療の目的は、単に血清脂質の値を改善することではなく、 冠動脈疾患などの発症を防ぎ、命を守ること、すなわち「予防」です。 まずは、食事療法や運動療法による生活習慣の改善を2〜3か月程度行い、 それでもコントロールできない場合に『薬物療法』を行います。 薬物療法は薬の作用により、コレステロールや中性脂肪をコントロールして脂質異常症を改善する治療法です。 薬物療法を開始するかどうかは、脂質異常症のタイプや症状を見極め、医師が最終的に判断します。


■脂質異常症の薬物療法

タイプに応じた薬の服用と危険因子の改善が大切

『脂質異常症』は、食事を中心とする生活習慣とのかかわりが深く、 治療の基本となるのは「食事療法と運動療法」です。 こうした生活療法を3〜6ヵ月間行っても十分に改善できない場合に、「薬物療法」を加えます。 また、冠動脈疾患のリスクがかなり高い場合は、最初から薬物療法が行われることがあります。

脂質異常症治療の目的は、単に血清脂質の値を改善することではなく、冠動脈疾患などの発症を防ぎ、 命を守ること、すなわち「予防」です。 近年、治療薬の有効性について、大規模臨床実験の結果が次々と発表されています。 その結果からも、薬を使って積極的に血清脂質を改善することが、冠動脈疾患の 発症や死亡のリスクを低減させるために有効であることが改めて確認されました。


●薬物療法のポイント

脂質異常症の薬物療法を受けるに当たり、重要なポイントが2つあります。

◆タイプに応じた薬を用いる

脂質異常症には、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中性脂肪血症の3つのタイプがあります。 このうち、薬物療法が行われるのは高LDL血症と高中性脂肪血症の場合です。 これらが両方ある場合は、両方の薬を併用することもあります。 低HDLコレステロール血症の場合は、まだ十分に効果的な薬が開発されていないため、 運動などを中心とした生活習慣の改善が治療の基本になります。
現在、脂質異常症の治療に使われている薬には、下記のようなものがあります。 脂質異常症のタイプは大きく次の3つに分けられ、それぞれのタイプに応じて薬が選択されます。

▼コレステロール値が高いタイプ
スタチンを中心に、レジン、プロブコールなどが用いられます。

▼中性脂肪値が高いタイプ
フィブラート系を中心に、ニコチン酸誘導体、EPAなどが用いられます。

▼コレステロール値も中性脂肪値も高いタイプ
スタチン単独あるいはフィブラート系単独で用いるほか、 スタチンとニコチン酸誘導体の併用などが行われます。

◆総合的な治療(包括的治療)を行う

脂質異常症の治療の目的は、動脈硬化の進行を抑えて、冠動脈疾患などを防ぐことにあります。 したがって、血液中のコレステロールなどだけではなく、動脈硬化や冠動脈疾患を招くほかの危険因子にも 十分に目を向ける必要があります。ほかの危険因子の有無を確認し、当てはまるものがあれば、 脂質異常症の治療と並行してその治療も行っていきます。
危険因子の1つである糖尿病がある患者さんの経過を見る、ある実験では、食事療法や薬物療法で、 血糖値を中心とした従来の管理をしていたグループでは、8年後に約半分の患者さんが冠動脈疾患を起こしました。 しかし、血糖値だけでなくコレステロールや血圧などを総合的に管理したグループは、 冠動脈疾患の発生率がその半分程度でした。 また、LDLコレステロール値を40mg/dl下げると、冠動脈疾患を起こす確率が25%下がり、 収縮期血圧を5mmHg下げると、冠動脈疾患を起こす確率が16〜17%下がるという研究結果もあります。 両者を同時に改善すると、相乗効果で、冠動脈疾患の予防効果はさらに高まります。
このように、冠動脈疾患を防ぐためには、他のさまざまな危険因子を、総合的に管理していくことが大切なのです。


●脂質異常症のタイプ@

LDLコレステロール値は、主にスタチンを用いて下げる

高LDLコレステロール血症の場合、「スタチン」が最初に選択される薬です。 スタチンは日本で開発された薬で、現在では世界中で使用されています。 スタチンには、肝臓に働きかけてコレステロールが合成されるのを抑え、肝臓に取り込まれるのを促す効果があります。 また、その効果とは別に、動脈硬化に伴う血管壁の炎症を抑える作用もあると考えられています。 それにより、動脈硬化の進行を防いだり、改善させることもわかっています。 さらに、動脈硬化巣の表面を安定化し破れにくくすることもわかってきました。 それにより血管を詰まらせる血栓ができにくくなり、心筋梗塞の予防が望めます。

副作用として「筋肉痛」「肩こり」「脱力感」などが起こることがあります。 また、数万人に1人の割合で、筋肉が壊死する「横紋筋融解」という、重大な副作用を起こすことがあります。 筋肉に違和感があればすぐに医師に相談しましょう。

◆その他に用いられる薬

スタチンだけでは十分な効果が得られない時に併用したり、変更して用いたりする薬に、次のようなものがあります。

▼陰イオン交換樹脂(レジン)
コレステロールの吸収を抑える作用があります。

▼エゼミチブ
コレステロールの吸収を抑えて、LDLコレステロール値を下げる作用があります。 この薬も、スタチンと併用されることが多くあります。

▼プロブコール
血管壁に溜まったコレステロールが酸化して変性すると、動脈硬化を進行させますが、それを抑える働きがあります。 体質的な要因でLDLコレステロール値が上がる「家族性高コレステロール血症」などで、 他の治療薬では効果がないときに用いられます。

●脂質異常症のタイプA

中性脂肪の値は、主にフィブラートを用いて下げる

中性脂肪の値は、食生活による影響が大きいため、できるだけ食生活の改善だけで様子を見ます。 それでも数値の改善が不十分な場合には、加えて薬物療法が行われます。 よく用いられるのが「フィブラート」です。 この薬には、肝臓で中性脂肪が合成されるのを抑え、中性脂肪の分解を促す作用があります。 フィブラートもスタチン同様、横紋筋融解が起こる可能性があります。 特にスタチンと併用すると起こりやすくなります。

◆他に用いられる薬

フィブラートだけでは効果が不十分なときは、次のような薬を併用します。

▼EPA製剤
魚の油に含まれる成分を抽出したもので、普段あまり魚を食べない人に、より効果的です。 また、血栓の形成を防ぐ働きもあります。

▼ニコチン酸誘導体
中性脂肪値を下げ、HDLコレステロール値をある程度上げる作用があります。 そのため、高中性脂肪血症に加えて、低HDLコレステロール血症がある人に適しています。